都市未来研究会 IN NISEKO

  • TOP
  • 研究内容

Research

研究内容

インフラ


マイクロモジュール、都市開発(ディベロップ&マネジメント)、エネルギー、交通、道路インフラについて、考えてゆくコーナーです。

■ マイクロモジュール

コミッティ:橋本 泰作さん、村上敦さん


現在は自治体を一つの単位(モジュール)として都市計画や都市運営が行われている。しかし同じ自治体内でも状況が異なる地域を抱え、地域の事情に合った細やかな対応が困難な状況も少なくない。地域の事情に合わせて自治体を小さな単位(マイクロモジュール)に分割し、マイクロモジュールをつなぎ合わせて都市機能を実現することで、特にインフラ整備では投資は小さく、更新サイクルは短く、変化への適応力を高めることができる。また、一つのモジュールに関わる住民数が少なくなれば、地域の意思決定の在り方、モジュールにある施設の運営、コモンズのあり様が変化する。人口減少、低密度化、都市縮退といった時代に、都市機能の持続可能性を高める都市のマイクロモジュール化の研究を行います。

■ 土地利用と行政計画のマネジメント

コミッティ:田中信一郎さん、後藤良子さん、山崎満広さん、村上敦さん


多くの欧米自治体は「計画なくして開発なし」の基本姿勢で、土地利用を包括的に管理しています。一方、日本の自治体には、土地利用を包括的に管理する権限がありません。総合計画や各種の行政計画は存在しますが、実際の土地利用と必ずしも連動していません。そのため、同じ地域内に、虫食い状で空き家・空き建物が増加するエリアがある一方、農地を宅地に転用するエリアが併存することも一般的です。本プロジェクトでは、日本でどのような土地利用と行政計画が求められるのか、ドイツ・フライブルクやアメリカ・ポートランドという優れた計画を持つ海外自治体を補助線とし、それをニセコ町に引いてみることを通じて、課題を具体的に検討します。ニセコ町をモデルとして、土地利用計画をラフに描くことを目標とします。

■ エネルギー

コミッティ:櫻井啓一郎さん、村上敦さん、歌川学さん


縮退する都市の未来を前提とし、かつ、現状で克服しなければならないエネルギー供給における課題を想定するなら、日本の気象条件、立地条件であれば、太陽光発電と風力発電が中心的なエネルギー供給を担い、電力中心によるエネルギーシステムへと転換される。
このことを前提として、まずはニセコ町でのエネルギー消費形態がどのような形になるのか推計し、それを供給できるエネルギーシステムの形はどのようなものになるのかデザインしてゆく。とりわけ電化によって、暖房・給湯の熱需要をヒートポンプの普及で、交通需要をBEVの普及で賄うようになると、配電網や電力供給の概念自体を大幅に転換する必要がある。この点について議論し、推計し、仮説の下で、都市計画にどのように組み込んでゆくのかを議論してゆきます。

■ モビリティ

コミッティ:櫻井啓一郎さん、村上敦さん、歌川学さん


乗用車においては、自動運転などIT技術、電化の流れは今後も加速度的に促進される。そのような背景において、ニセコ町では北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の2030年開通を控え、これまでの公共交通にも激変が生じようとしている。具体的には、①新幹線と並行する在来線(函館本線)の廃止に伴うニセコ駅の存続と、②車で20分の距離にある倶知安駅から新幹線で札幌まで20分という高速でつながる交通の出現である。③同時に、高齢化が進むことで自らが自由にマイカーを運転することが困難になる変化も訪れようとしている。このような状況から将来、BEVへの転換がどこまで進むのか、その際のインフラ(充電ポスト)はどのようなものになるのか、現状の公共交通(路線バス)、オンデマンドのコミュニティ交通(にこっとBUS)、助け合い交通(福井地区)、通常のタクシーに加えて、どのような交通手段が提供されるべきなのか、都市計画の中に何を組み込むべきなのか議論します。

■ 人優先の道づくり

コミッティ:調整中


日本の街は車をもっとも優先してきました。そして車道の脇に歩く道がつくられました。経済発展のためにそうしたことが機能した時期もあるでしょう。しかし今こそ人が中心になった道づくりが大事だと考えています。まずは人を中心に、そのあとに自転車を、最後に車を考えるのです。車を最短で走らせるのでなく、人こそ最短で歩けるように、そして楽しんで歩ける道を考えていくようなフットパスのある道路計画を研究していこうと思います。その際、市街地と農村部、山間部では道の作り方も違うでしょう。特に市街地については地上階の建築計画も歩く人にとって重要です。歩く人にとって魅力的なまちづくりの研究をしていきます。

地域と社会


教育、土と生態系、水の循環と農的暮らし、歴史(郷土、有島武郎)、福祉・医療・健康、コミュニティデザイン/パターンランゲージと合意形成について、考えてゆくコーナーです。

■ 教育

コミッティ:西村勇哉さん、福本理恵さん、渡邊剛さん


100年に一度の教育改革が起ころうとしています。コロナ禍の中で実施を余儀なくされたオンライン学習や文科省や経産省が掲げるGIGAスクール構想で学びはどのようにシフトチェンジできるのでしょうか?22世紀は人類が宇宙で暮らし、人体の神秘がさらに解明されていることでしょう。そんな中、人間とは何か、私たちはどう生き、学ぶのかという観点から未来の地球を予測したバックキャスト型の学びを創っていくことが今世紀の教育改革のコアになるのではないかと考えます。縮退する未来の先端社会の中で教育の役割は拡張し、一人一人が輝き生きるための学びの最適化が多様な形で広がるのではないかと期待しています。個が際立ち最大限に生かされる形が縮小化する社会の生きる道でもあるかもしれません。このような視点に立ち、学びを再定義するようなことを皆さんとともに創発し、展開していきたいと考えています。

■ 農的暮らしの共同性と生態系〈水・土・風・生態〉

コミッティ:須崎文代さん、林憲吾さん、宮崎亘さん、西村勇哉さん


風土と共に暮らす人間生活のヴィジョンを描くには、その土地固有の生態系を尊重することが不可欠です。人間と大地を切り離そうとしてきた近現代の都市を批判的に捉え、未来に向けて見直すために、ここでは人間も生態系を構成する一員として位置づけます。〈水:分水嶺、水勢〉、〈土:地質、地勢〉、〈生態:動植物、微生物、菌類〉、〈風:季節、気流〉といった生環境を構成する諸要素は、農的暮らしと密接に関係します。人類は長い歴史のなかで、生活共同体〈コミューン〉を形成することによってこうした過酷な自然環境と向き合う知恵を獲得してきました。ニセコではさらに、有島武郎の思想に基づく共同体運営の土壌があります。未来の生活モデル構築に向けて、相互扶助を含む共生の思想を歴史・文化的観点から検討します。
【Keywords】有島武郎、クロポトキン、ダーウィン、生態系、生活共同体、相互扶助

■ コミュニティデザイン/パターンランゲージと合意形成

コミッティ:連勇太朗さん、西村勇哉さん、依田真美さん


パタンランゲージは、C.アレグザンダーという建築家によって考案された豊かな都市や空間を生み出すためのデザインの方法論です。具体的には、美しい町や空間に共通する型をパターン化し体系化したものであり、誰もが空間創出の担い手として振る舞えるような社会の実現を目的としています。パタンランゲージの理論は世界中でひろまりボトムアップのまちづくりの実践をはじめ、情報化社会におけるソフトウェア開発や情報共有の方法論としても様々な領域で影響を与えました。本プロジェクトでは、多様な主体がニセコの空間的可能性や価値を発見・共有し、それをもとにより良い空間の創出や新たな都市的実験を共創していくためのプラットフォームのひとつとして、ニセコにまつわる空間的言語の開発をパタンランゲージの理論を批評的に応用しながら実装していきます。

■ 福祉と医療

コミッティ:調整中


高齢化する地方において、福祉と医療は重要なキーワードです。ここでは医療のあり方そのものの議論もありますが、加えて、そこにアクセスする交通手段や利用方法の新たな形も模索していく必要があります。相互扶助の精神を基本に、町全体が充実した福祉と医療のインフラになる、サービスでなく住民自治や企業の力で解決する方法を模索します。ここでは大いに新しいテクノロジーの活用も検討します。しかし、技術だけに頼ることなく、人々の精神的な側面からのアプローチも必要です。そのため、福祉と医療の専門家チームと先端テクノロジーとをつなげながら、具体的な利用方法を提案していきます。初期のアプローチは「実証:見える地図づくり」と連携して進めます。

新しい経済


コモンズと不動産と仮想通貨/地域通貨、経済について、考えてゆくコーナーです。

■ コモンズと不動産、金融の仕組み

コミッティ:林篤志さん、阿部喨一さん、土谷貞雄さん


ここでは土地利用のありかたについて研究します。特にコモンズと言われるコミュニティー内で共有する土地利用の考え方を、現代の都市計画の中でどのように応用できるかを考えていきます。投機利用のための土地から人々が生きていくための土地に進化させていくために、土地の売買の方法や価値の算定の仕方などについて新たな方法を見出す必要があります。今までの土地の売買の方法から、新たな方法を創造する必要があります。そのためにクラウドファンディングや証券化、地域通貨、電子通貨など金融の新しい仕組みを組み合わせてその方法を模索していきます。所有についての課題を解決することは、今後の都市計画をつくる時の重要な基礎となり、経済の仕組みに強く連動します。実証実験の地域通貨にも強く関連します。

■ 地域経済と循環

コミッティ:調整中


現状の市場経済には本来、境界は存在しません。とりわけ一つの行政区域内で経済は完結しませんから、地域経済や域内経済循環という言葉そのものが矛盾しています。経済活動の原則は、頻繁に、大きく、大量にモノやカネが交換/生産されればされるほど、取引する両者が豊かになるというものです。それは日本国憲法でも人権(経済的自由権)として保障されています。しかし、市場経済というツールの限界に達したのか、交換/生産の量や回数を増やしても、私たちは豊かさを実感できなくなりつつあります。そして社会は、地域経済や域内経済循環という言葉や考え方に魅了されるようになっています。ここでは、縮退する未来の経済のあり方について考えてみたいと思います。それは、金融や貨幣に関わることなのかもしれませんし、交換や取引、そして生産のあり方に関わることなのかも知れません。エコノミーの語源は古典ギリシャ語で「家を治める」の意です。この語源の意について思考を深める必要があるのかもしれません。

建築、空間設計、都市デザイン


パターンランゲージと隙間と建築、市街地の都市計画、農村計画/デザイン、リゾート/観光計画について、考えてゆくコーナーです。

■ 隙間と建築

コミッティ:青木弘司さん、連勇太朗さん、徳留裕敏さん、山雄和真さん、海法圭さん、土谷貞雄さん


隙間とは、物と物の間を意味しますが、この「間」という言葉には、ニセコのような寒冷地の建築の未来を考える上での重要なヒントが隠されていると思っています。たとえば、寒冷地では住宅の玄関フードとして広く普及している風除室は、内部と外部の「間」の空間として、寒風や雪の吹き込みを防ぐという重要な役割を担っています。内部と外部の二項対立から空間を捉えるのではなく、「間」の空間を代表する風除室を第三項として位置付けながら、あたらしい建築の在り方を導き出したいと考えています。冬の過酷な環境から身を守りつつ、刻々と変化する自然に寄り添いながら暮らすための場所として、風除室のような半屋外空間は魅力的です。また、風除室を住宅の占有部から切り離し、隣人とシェアする場所として設えても良いかも知れません。このように、風除室のような「間」の空間から建築を捉えていくことで、さまざまな暮らし方の想像が膨らみます。

■ 農村の暮らしと山の暮らし、そしてリゾートのあり方

コミッティ:依田真美さん、山雄和真さん、青木浩司さん、土谷貞雄さん


日本において都市の関心は市街地に向けられ、今までの都市計画は市街地が中心でした。それは市街地に人口が集中し、経済の基盤がそこに集約してきたからです。しかし、都市とは本来、生産基盤のある農村集落と市街地がセットであるべきものです。縮退する未来を考えるとき、今までとは違うベクトルが必要です。地方分散型社会へシフトするには、農村のデザインが重要です。若い人が農村の暮らしや農業に回帰するためにも、適切な価格での住まいや農地が、農村には用意されなければなりません。そして農村での営みを再定義し、美しい農村の風景をどうつくっていくのか。そこには観光における未来像の鍵も潜んでいます。観光客が消費するための風景でなく、日常の営みがどう魅力的であるのか、これが観光の本質のように思います。リゾート開発については、リゾートとその周辺住民との境界線を考える必要があるでしょう。このコーナーでは美しい農村、美しい山の暮らし、そしてリゾートのあり方を考えていこうと思います。市街地の外にある暮らしを考え、農村デザインが確立することで、市街地の都市計画のありようにも指針が持てるようになると考えています。

自然と生態系


ここは自然を読み解くためのコーナーです。自然への理解をしていくには、まだまだ知らないことに向き合っていく必要がありそうです。科学的にアプローチすることに合わせて、自分たちの身体のセンサーを上げていくことも同時にしていきます。

■ 雪・水・土の中の生物

コミッティー:タケナカ ヒロヒコさん、植竹淳さん、上野香菜子さん、宮崎亘さん


土の中の菌を見つけることで自然の見方が変わります。目に見えている対象としての自然から、目に見えないバクテリアの存在を考えてそこに向き合うことで、様々なものが関係性の中で存在していることに気づきはじめるのです。その目に見えない関係性をつなぎあわせるためのバクテリアですが、考え方によってはバクテリアが生きるために人間や動物、植物がいるのかもしれません。雪の上、水の中にも注目してフィールド研究を行なっていきます。

ニセコ町における実証


オープンデータ、および地域通貨については、先行してニセコ町で実証実験をしてゆきます。

■ オープンデータ×(建築空間、福祉、生態系、地域通貨など)

コミッティ:庄司昌彦さん、高内章さん


インターネットが急速に普及したこの20年で、私たちは時空を超えてつながりあい、自由に自らの見解を表明しあうことができるようになりました。そして、これからの10年、そのデータの発信源は、あらゆるモノや価値交換の現場にまで広がり、膨大なデータが収集されていくでしょう。しかし、データは集めるだけですぐに使い物になるわけではありません。データの性格に応じて「どのように整理し、どのようなに公開すれば使いやすくなるのか」また「どのようにすれば安全に運用することができるのか」考えなければならない課題は山積しています。そして何より、日々の生活を映し、問題を表出させ、解決策を探るための材料となる「データ」は、水や空気と同じように、主人公である住民の福祉のために安全に利用される「コモンズ」として育てる必要があるでしょう。このコーナーでは、街のデータのオープン化による民主的利用の推進に留まらず、研究会の活動の全てに関わる「データ」の問題を議論するハブとして機能していきます。

■ 地域通貨×(コミュニティー)

コミッティ:高内章さん、阿部喨一さん、土谷貞雄さん


地域通貨の実験をPEACE COINというブロックチェーンを利用した電子通貨を使って実験します。地域通貨はコミュニティー内だけで使われるお金です。PEACE COINは、人と人との関係性を基本として感謝の言葉としてお金を使うものです。今までの貯めていくためのお金から、使うためのお金の仕組みとも言えます。PEACE COINは使わなければ目減りし、使えば使うほど増えていくというアルゴリズムが組み込まれています。こうした共感経済圏とも言える未来のお金のありかたを実験していく場所です。ここでは多くのニセコ町民の方々と一緒に活動していこうと考えています。
*1回目の地域通貨説明会を4月17日13時〜15時で行います。ZOOMでの参加になります。是非ご参加ください。

※開催時間を15時〜17時から13時〜15時に変更しております。
  • TOP
  • 研究内容